「ちいさい言語学者の冒険」が面白くて読むのに2週間かかった話
前回岩波科学ライブラリーの
「子どもの算数,なんでそうなる?」
を読んでめっちゃ面白かったので
子供の算数なんでそうなるめちゃくちゃ面白かった。
— なつひこ☺︎@初パタ29w (@na2h1ko) 2022年7月24日
算数レベルなので大人なら誰でも分かる内容をテーマにしながら、数学者ならではの深い考察に知的好奇心が満たされ、お子さんのほっこりエピソードに心はあったまる最高の本でした。
子どもの算数,なんでそうなる? https://t.co/TUxBsqoGPR
同じ岩波科学ライブラリーの
「ちいさい言語学者の冒険」を読んでみました.
選んだ理由は,もともと言語学にちょっと興味があったことと
おたまさんのブログで紹介されていた「ことばの発達の謎を解く」を読んでいたこともあって子供の言語習得が自分の中でホットな話題だったからです.
■特徴
これ大学の授業の一回目(イントロダクション)にこの話されたら全員言語学の授業取っちゃうだろうなってくらい面白く,分かりやすい本でした.
「子どもの算数,なんでそうなる?」もとても読みやすい文でしたが,「ちいさい言語学者の冒険」も同じかそれ以上に読みやすい文,親しみやすい内容となっていました.
自分が何気なく使っている日本語のルール,法則の紹介に知的好奇心くすぐられ,
子どもたちの"間違い"にほっこりしたり関心したりする.
ここまで書いて思いましたが「子どもの算数,なんでそうなる?」と同じ感想になってますね(笑)
■面白かったところ
ほぼ全部ですが,
・濁点の中で「は」と「ば」は特別な関係の話
中学の時に無声音を習った時の驚きを思い出しました.
自分の子供に「ばからテンテンを取ったら何になる?」は聞きたいなと思いました.
・ライマンの法則
濁点が付くつかないの法則の話ですが,妻に話したところ「焼き」+「たらこ」は焼きだらこにならないけど?とすぐに反例をだされ(注:反例ではない)調べてみたところ「濁音が付かないときのルール」であり「濁音が付くルール」ではなかったことに気づきなんとなく数学の逆とか対偶を思い出しました.
・特殊拍の話
これは僕も小さいころに575文字じゃないのに575として扱ってる!と思ったことがありました.(ここでまあそういうもんなんだなと深堀しないのが僕が学問に向いてない理由でもあり学校のテストだけ得意だった理由だと思ってます.)
その後の促音の定義なども感心させられました.
・ちががでた
僕が子供の言語に興味を持ったきっかけでもある有名な話はこの本でも紹介されていました.ほかにも「とうも殺し」などの音位転換「死む」「死まない」「死めば」の死の活用形などの例も紹介されていました.そのどれも子供からすると合理的な判断で子供の学習能力の高さを感じました.
・使役の話
せる・させるを付ける前にたまたま使役動詞があるか判断する必要があるというのは,
敬語を学んだ時に感じた難しさと似ているなと思いました.
中高の自分でも苦労したことを子供は学んでいるんだな~と思いました.
・過剰な一般化
一般化ってできたときの快感がすごくて,「れる・られる」の使い分けの一般化を学校で学んだときの感動はすごかったことを思い出しました.(五段活用はれるなことしかもう覚えていないけど)
それを子供もしてしまうんだよな~,言語って例外多くてむずいよな~と同情しました.
そして大人になって松明,剃刀, 数珠,鳥取,秩父,とかで盛り上がってくれるといいな.
・自分で見つける話
子どもは自分が一般化できるルールにつながりそうな場合だけ周囲から得られる情報を参考にするようなので,大人は過度に訂正したり,過度に教えたりする必要がないっていうのは気が楽になってよかったです.
元論文のMother,I'd rather do it my selfからいろいろ探してみましたが
母子間言語交渉と言語発達 : 言語コミュニケーション指導への示唆
なども面白かったです.
3000万語の格差の話も今はあまり有力じゃない説らしいので過剰に身構える必要はないのかなと
・ぶぶ漬けは子供に伝わらない話
ここは本の話というより,僕がこの本を読んで考えたことなんですが,
良く仕事では「まず質問にきちんと答えろ(直接的な表現を使え)」って言われます.
発達的には直接的な表現を先に習得してその後間接的な表現を習得するはずなので,社会人が直接的な表現を使えないのってたぶん能力の問題じゃないんですよね.
おそらく心理的安全性の話からアプローチするほうが良くて,間接的な表現は人を傷つけにくい=自分を守るために使っているんだろうなと思います.
だから新人が間接的表現が多くてそのご直接的な表現が使えるようになるのは能力が向上したのではなく心理的安全が高まったのかな~みたいなことを思いました.(この本に書いてある間接的表現と僕の使っている間接的表現はたぶん違うので誤解させたら申し訳ない)
・グライスの会話の公理
いじわるなぞなぞはグライスの会話の公理を意図せず使っている意外と高度な遊びってことが紹介されていましたが,僕の好きなギャンブルマンガ(カイジ,嘘喰い,ジャンケットバンク)とか小説の叙述トリックなんかもこれで説明できるのではないかなと思いました.
■次読む本
同じ岩波書店さんの「算数文章題が解けない子どもたち」を読もうと思っています.
いままであんまり出版社を意識して本読んでなかったのですが,Web3の炎上などの話もあり少し出版社さんを意識するようになってきました.